2013年01月20日

協議離婚とアメリカ合衆国での離婚

Q 日本でなされた協議離婚はアメリカ合衆国(各州)で有効な離婚と認められますか?

私は日本国籍のみを持つ日本人で夫はアメリが合衆国のA州にて生まれときから住んでいるアメリカ合衆国籍のみを持つアメリカ人です。私と夫は,A州でA州法の方式・やり方で婚姻しました。この婚姻は東京の区役所に報告として届出をしています。しかし,夫と私は,話し合いで夫はA州に,私は東京で別々に生活しています。夫と話し合って離婚することに合意できそうです。 東京の区役所で協議離婚の届出をすれば,アメリカ合衆国での離婚手続は必要ないのでしょうか?

A そもそもご質問のような夫婦の協議離婚の届出が区役所等でできるのかどうかが問題となりますが,これについては現在では協議離婚ができるようになっています。もっともその協議離婚の効力がどうなるかは検討の必要があります。

(1)もちろん,東京の区役所で協議離婚の届出をすることで,日本の各種役所の行政上の扱いや裁判所での手続では離婚の効力が原則として認められることになると予想されます。

もっとも,離婚の一般の場合と同様に,離婚が届出としての方式を満たさず届出として成立していないとき,あるいは離婚意思が認められず無効であるとき,強迫による離婚として取消しが認められたときなどは,離婚の効力はみとめられません。

(2)次に,日本での協議離婚の届出をしたことによって,アメリカ合衆国(の連邦や各州)において離婚の効力が認められるかどうかは別問題となります。

日本でのある協議離婚も,それが日本で有効な離婚とされる場合であっても,各州の行政機関や裁判所は「この協議離婚がこの州では有効な離婚として認められるか」について独自に判断することができます。

結局,日本である協議離婚を行ったときに,それがアメリカ合衆国(の各州)において有効な離婚として認められるかどうかは,各州において決められることであって,わからないということになります。

なお,第1に,アメリカ合衆国においては連邦政府あるいは各州が戸籍のような制度を設けているということはありません(もっとも50州全部を調べたわけではありませんので,もしかすると「そうでない場合もある」かもしれません。)。

また第2に,そもそもアメリカ合衆国市民間の婚姻や離婚の場合でさえ,ある州で認められている婚姻や離婚の効力が他の州では認められないということがあります。これは,不便なことにも思えますが,アメリカ合衆国は各州の連邦として成立した国であるので,当然なことでもあります。 日本で行なったある協議離婚もA州で有効な離婚として認められてもB州では有効な離婚としては認めないということもあります。

さらに第3に,アメリカ合衆国の各州では,離婚の手続は,原則として裁判所において行われます。(これも50州全部を調べたわけではありませんので,そうでない州もあるかもしれません。また,調停等については民間の機関が行なうこともありえます。)。
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2013年01月18日

ハーグ条約シンポジウム

1月16日に,外務省主催シンポジウム「ハーグ条約シンポジウム-国際家事調停の在り方を巡って-」(三田)に行って参りました。
日本もハーグ条約に加盟することになりそうですが,連れ去った親と残った親との調整をうまくはかっていけるといいと思います。
家事事件での調停もいい形でつかえればほんとにいいので,弁護士として腕を磨きたいと願っています。

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2013年01月16日

判例に付ける名前

コモン・ロー(英米法)の事件の呼び名は,たいていは当事者の名前などで付けられています。
引用する時には判例集まで含めて,Ghaidan v Goden-Mendoza [2004] UKHL 30 となります。
あるいは,Meinhard v. Salmon, 164 N.E. 545 (N.Y. 1928) となります。

これは,当事者となった人たちが法を作る原動力となるという考え方が現れているように感じます。
(樋口範雄「はじめてのアメリカ法」(有斐閣 2010)54-55頁)

実際に,Peter Irons ”A People's History of the Supreme Court: The Men and Women Whose Cases and Decisions Have Shaped OurConstitution: Revised Edition” Penguin Books; Revised edition (July 25, 2006) といった題名の本さえあります。

これに対して,日本の裁判所の事件の呼び名は,裁判所名や日付などで付けられています。
引用する時には裁判所判決等の日付と判例集を示して,最高裁大法廷判決昭和48年4月4日刑集27巻3号265号となります。これにニックネームが付く時も,尊属殺重罰規定違憲判決といった形で付けて,当事者名で付けるのはきわめて稀です。

(むろん裁判所内の事件の事務処理のために事件ごとに番号が振られたりするのはどこの国や法域でも同じです。)
posted by hirotaka at 10:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記